(テキスト版)
「ある男児から学ぶ」
ダウン症の特性を持つ男児。学校では同じ学年の数多くの人達から、サヨナラの挨拶をしてもらい、一躍アイドルにでもなったかの勢いで彼も握手をしたり、言葉にはならないが頭を下げて短い声を発しながら答えている様子を見ていると、とても愛くるしい感じがしてくる。しかし、彼が発する声は言葉にならない言葉。彼は一生懸命声に出して何かを伝えようとしているが、正直その意味を捉えることは簡単では無い。ところが最近になって、「これかな」という感覚が、ほんの少しだがわかる部分が見えてきた気がしている。これからこうした感覚がもっと増えればいいなぁと思うのだが、今わかっていることも正解ではないかも知れないし、同じような発声でも「どうも違うなぁ」ということもある。やはり、特性を理解するということは奧が深い。「言葉は無くとも人と人の心は通じ合う」という今までのキャリアから学んできた事をこの最終章でいつか改めて確認できれば幸いだ。